諦め続ける薬

忘れることは、疲れに対する最高の薬。思い出に対する最悪の薬。

ボードゲームインストに関する個人的体験

 ボードゲーム日記番外。インストについて。
 私自身がボードゲームを買い、友人や知人とプレイする際、当然私がそのゲームの説明をする。
 もともと身内でしかやらない私としては、説明を受けたことというのがほとんどない。同じ趣味を持った先輩から数回くらい。ゲーム会などに参加するつもりもない。おそらくそうなったらやるゲームの知識を事前に得ようとするだろう。
 それでも、インストの重要さに関しては疑いようがない。きちんと説明しなければ、プレイヤーは楽しめず、ゲームが動かないからだ。ゲームファンの間でも、インストに関してはよくコメントをみる。
 私は軽いゲームばかり遊んでいるが、重いゲームに至ってはどうなるか想像しがたい。どれだけ説明を丁寧にすべきか、ということ。過去のボードゲーム日記でもその点はいつも記している。
 今回は、インスト中にあったことを書いてみた。また、私がインストした実例についても。

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よくある、よくないであろう例について。

  • 説明書を渡すのはよくない。

 両親が多機能電話機の説明書を読むだろうか。新たに部屋に来た人がプリンターの使い方の説明書を自発的に読み出すだろうか。
 まず、(私のように)説明書を読むのが大好きな人と、実際にやりながら覚えたい人がいる。この認識は重要。
 そして、説明書からすべてを把握するのが早い人がいて、そうでない人もいる。
 ボードゲームの説明書は、他の商品のそれと比べ、細心の注意を払って書かれているものがほとんどではあるが、それ以上に、きっちり説明することは重要である。ゲームの中には、やってみないと感覚が分からないものが多くあるからだ。
 少なくとも、説明書を渡して「読んでおいてね」「分かったら始めよう」というのは、なかなか人のことを放り投げていると思う。

 トランプなら別にいい。4つのスートが1-13までの13枚ずつ、あとJOKER。ほとんどの人が存在を知っているであろうと思う。
 しかし、そのゲームを初めて見た人にとっては、何を使うかというのは重要である。使われているものが何であるかというのはぜひ説明しておきたい。
 効果があるカードの場合、その効果の概要が書かれているものが多い。しかしそれだけに任せると、処理の際に揉めたりする。
 不十分だとこうなる。

家族と「ドメモ」プレイ開始。一通り説明し、[1のコマは1つ、2のコマは2つ……というようにあって、全部で28枚]というのも説明している。
 母がやがて呟く。「ああ、こういうゲームなのね」「ところで、この数字ってすべて同じ枚数あるの?」

「ニムト」プレイ中。「これって数字被ったらどうなるんですか?」

 使うものはすべて見せること。カードの内訳を説明して、その上すべて表にして見せること。百聞は一見に如かずとはよく言ったもの。
 そして、「それらの説明が十分であったとしても、初めてやる人の中にはゲームの一回目に疑問を持つ人がいる」というのも理解することが重要。
 一番いい例は、「まず一回、テストプレイしてみますか」と言うことだろうと思う。それで失敗したことはない。

  • ゲームに対し皆が皆興味を持って集中を切らさないだろうと思うのはよくない。

 インストとは違う話になるかもしれないけれど。説明がうまくないと飽きられる。そもそもゲームに臨む状況は全員同じというわけではない。楽しもうと思うところから、ちょっと暇をつぶそうくらいまである。ゲーム会なら別だが。
 インストの時にどうもうまくいかない時は、こういう場合もある。

  • やり方だけをまず順を追って説明するのはよくない。

 これはゲームによるだろう、とは思う。ものによっては手元の道具の軽い説明が先だったりする。ある意味これは個人的な考えだ。概念を説明するのが最初、となると入りやすいだろう、という思考。そうでない人もいる。
 最初に、「このゲームが目指すところ」の方がいいのではないかと思う。「やり方の一番目」より、「勝利条件」が先。「勝利条件」より、「ゲームの概要」が先。
 そこを説明できると、スムーズさが増す。
 ただ、ボードゲームはテーマを"story"としてつけているものだけでなく、"flavor"としてつけているものもあれば"schema"としてつけているものもある。流れを完璧に説明しているもの、ゲームの空気を具体的にするもの、人が知っている概念をゲームに落とし込んでいるもの。それらをひとまとめにして概念として用いると、たまにズレが発生することに注意。
 「ビッグチーズ」を会社経営のゲームとして説明するのは、入札→働かせる→お金を得るというのが概念としてあるからだ。プレイヤーは社長ですと説明書に書いてあり、駒がねずみになっているのはそのためである。
 「ごきぶりポーカー」はポーカーでなければ、各マークに違いもない。だけど、忌み嫌われるものは押し付けられたらいまわしにされる、という皆が持っている概念のためにこういうデザインになっている。
 うまいこと説明できると、プレイヤーが次々に没入していく。

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 実際のインストを書き出してみる。
 当然よくない。書き出すとさらにチープさが増す。最善かどうかは様々な要素によって変わる。皆が楽しんでくれたかどうかで、よかったかどうかが決まるといってよいが、どうしたら改善できるかは迷う。どう改善すればいいかを色々な人に訊いてみたい。
 とりあえず好きなゲーム。


 (1)ハゲタカのえじき
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%82%B2%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%81%AE%E3%81%88%E3%81%98%E3%81%8D

さて、まずみんなカードを持ったかと思う。みんなが持っているカードは構成が一緒で、1から15までのカードが一枚ずつ入っている。こんな感じね(見せる)。そしてここに特典カードが積んである山札がある。こんな感じ。+1から+10までと、-1から-5までのカードがある。
皆が手札を道具として使って、この得点カードを取り合うって言うのがこのゲームなんだ。
やることは簡単。まず得点カードがめくられる(めくってみる)。そうしたら、皆が手札から好きなカードを選んで一枚伏せる(ふせてみる)。揃ったらいっせーのーせでめくって、一番強いカードを出した人がこの得点カードをもらえるわけだ。
簡単! これを15回繰り返すだけ。一回使ったカードは使えないからもう横においておく。
そしてこのゲーム、ルールが三つある。一番、「プラスのカードが出たら、最も強い人がもらう」。これはさっき言った。二つ目、得点のカードはマイナスのものもあるんだけれど、「マイナスのカードは、最も弱い人がもらわないといけない」。ここがちょっと違う。だから、"マイナスのカードをもらいたくない時はより高いカードを出さないといけない"わけだ。そして"プラスのカードをもらいたい時も高いカードを出さないといけない"んだ。ここがポイント。
三番目のルールは、数字が被った時の話。例えば、+10の一番強いカードが出たとして、みんな手持ちで一番大きな15の手札を出そうと思うだろうけれど、「他の人と被った時、その人たちはカードをもらえない」んだ。その次に強い人がもらうことになる。
得点カードがマイナスの時もそう。最も低い所で他の人とかぶったら、その人たちはもらわなくていい。次に低い人がもらうことになる。
(ちなみに全員被った時は、そのままにしておいて次の得点カードをめくって、その二枚を新たに奪い合う)
こんな感じかな。気になることはある? とりあえず一回テストプレイしてみると感覚が分かるかもしれない。


 (2)髑髏と薔薇
http://www.skull-and-roses.com/pdf/Skull_rules_Us.pdf
例外状況は除いておいて後から説明した。ペナルティとか、スタートプレイヤーとか。

みんなに四枚のカードを渡した。表にはデザイン、裏には薔薇が三枚、髑髏が一枚書いてある。みんな一回表にして見せてみようか。これ、デザインがちょっと違うんだけど、暴走族の小さいチームのマークになっている。みんな小さな暴走族のリーダーだ。今回はこのカードを使って、総大将みたいなのを決めようと思う。そんなイメージでいてくれればいいよ。ちょっとした読みあいのゲームだ。
リーダーはやっぱり度胸のある人がいいだろう。そんなわけで、今からみんなにはある課題をクリアしようとしてもらう。そのクリアを二回やった人が勝ち。その人が総大将。二ポイント取れば勝ちって感じかな。
課題って言うのは、ちょっと説明が難しい。みんなでカードをおいていくんだけど、「薔薇をめくる枚数を宣言して、その通りの枚数の薔薇を捲れれば勝ち」ということ。分かりやすくするため、ちょっと順番に説明してみようか。
順番が来たら、カードを一枚置く。試しに置いてみよう(置く)。髑髏でも薔薇でも、どちらでもいい。さて、順番にみんな一枚ずつ置いた。
二週目が来たら、二つの選択のうちどちらかを選ぶ。一つ目は「さらに追加で一枚置く」。もしくは二つ目、「チャレンジを宣言する」。
例えばここである人がチャレンジを宣言したら。そこで置くのは終わりになって、今回の挑戦者を決める段階に移る。課題をクリアしようとする人を選ぶ訳だ。課題は「薔薇をめくる枚数」。例えば「チャレンジ2枚」って言ったら、私は挑戦者になったら薔薇を二枚めくりますよー、というわけだ。そうすると次の人は、それよりも上の枚数をチャレンジするか、このラウンドは降りるかを選択する。オークションみたいなものだね。「チャレンジ2枚」→「3枚」→「降りる」→「5枚」……みたいな感じ。降りると、挑戦者にはなれないけれど、課題に失敗した時のペナルティがない。降りる時は分かりやすく、カードを手前に押すことでします。一人以外全員降りたら、残った人が挑戦者となる。
挑戦者は、実際にカードをめくっていく。宣言した枚数捲れれば勝ち。ただしルールがあって、「まずは自分の前にあるカードを全部めくる」必要がある。自分のところを全部めくったら、あとは好きな人の前のカードの上から、一枚ずつめくる。
例えば、この状況で4枚めくる時は、まず自分のをめくって、残り三か所めくって、全部薔薇だったら挑戦成功、一ポイントというわけ。一ポイント取ったら、この台座の紙を裏返すことで示す。
もし髑髏をめくったら、ポイントはもらえずペナルティ。手札がランダムに一枚減る。ぴんと来ないかもしれないけれど、手札がなくなっていくと結構つらい。そして手札が全部なくなるとこのゲームから脱落する。
だいたいこんな感じかな。"挑戦したければ薔薇を置いていく必要がある"けれど、"相手を引っかけたい時は髑髏を置く必要がある"。"髑髏をおいていてもチャレンジ枚数を宣言するのは良い"けれど、挑戦者になってしまうと、まず自分のところからめくらないといけないから、即失敗。これは自爆という。自爆の時も手札が一枚減る。
一回やってみると感覚がつかめるかな。ちょっと勝ち負け関係なしにやってみようか。