諦め続ける薬

忘れることは、疲れに対する最高の薬。思い出に対する最悪の薬。

感想―米澤穂信/リカーシブル

 米澤穂信/リカーシブル、感想。
http://pandreamium.sblo.jp/article/61772388.html
 連載を第三章くらいまでは追っていたものの続きを読み逃してしまっていた。しかしながらこれは一気読みできて正直非常にうれしい。すべての情報の繋がる感じや、明らかになった後の読み返し。

この町はどこかおかしい。父が失踪し、母の故郷に引越してきた姉ハルカと弟サトル。弟は急に予知能力を発揮し始め、姉は「タマナヒメ」なる伝説上の女が、この町に実在することを知る――。血の繋がらない姉と弟が、ほろ苦い家族の過去を乗り越えて田舎町のミステリーに迫る。著者2年ぶりとなる待望の長編登場。
http://www.shinchosha.co.jp/book/301473/

 序盤から中盤にかけて、得体の知れないものが背中を撫でる感覚。引っ越しから学校生活、日常の謎の中。それらに町が持つ違和感とサトルの「見たことがある」発言が合って不気味さが際立つ。ハルカの不安はタマナヒメ伝説の話に入るとより膨れ上がり、弟の謎と伝説、高速道路問題とが絡み合う。
 母との会話。ここが転換点となる。ここまで徹して書かれると非常に密で残酷。そしてこのシーンから、ある種ホラーサスペンスらしかった流れが、ミステリへと転換する。その気付きも残酷なものの一つだろう。すべて絡み合っていた。
 急転からの解答。相変わらずの鮮やかな伏線回収と、仕組み。日常の謎の連結どころか、日常の謎ですら、という。

 印象的なのはハルカがサトルに話すシーン。「よく聞いて、覚えるの」。そのすぐ前でのサトルの所作もヒントになりつつ、彼女の性質と意志が伝わる。序盤は怒る気もなかった状態から考えると、終盤の彼女の呟きとともに、転換を明らかとしている。

 読み返しが趣味の私なので、本作も楽しみ。序盤はもちろん、あのシーンでは声をあげそうになった。マジシャンズチョイスのような驚くべき仕掛け。あまりにあからさまなのに分からないそれらを心ゆくまで楽しめる。