諦め続ける薬

忘れることは、疲れに対する最高の薬。思い出に対する最悪の薬。

映画感想 - 劇場版魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語

 所用で遠くまで出る必要があり、しかも夕方は暇だったのでレイトショーへ。劇場版魔法少女まどか☆マギカ叛逆の物語。
 総集編も観たかったものの、劇場が遠かった。今回は予定がありとてもタイミングがよい。
http://www.madoka-magica.com/

 ネタバレはないわけではない。というかあるな。ところどころぼかしつつ。何の情報も観たくないという方は閉じていただければ。

 格闘ゲームで例えると、今まで見たことのないコンボで10割決められやりたかっただけーと言われたような感じ。そりゃそうでしょうよ! と言いながらこちらは座ってみている。なかなかない体験。これはtwitterでも書いた。
 以降続きを読むより。あとで追記するかも。

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空っぽになったらポイされるんだよ

 「結婚に対して意識しているか」という話が、この間出た。
 その時は適当なことを言ってごまかしたものの、帰ってからしばらく考え込んでしまう。
 結婚って何だろう。

 あ、別にこのエントリは社会の変化云々に関して述べるわけではないので安心してほしい。自分の話。
 あとエントリタイトルで思い出したけれど、陽毬のキスの話の後であの回想話というのはとんでもない構成だと思った。

 以降、断片文章。

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 私の結婚に対する意識の低さは、まず結婚式イベントの少なさにあるのではないかと思う。せいぜい二回だし。親しい友人から結婚式の招待状が来るというのもまだ体験していない。twitterで結婚に関する話題および結婚したtwitter-erの方々をお見かけする回数の方が多い。
 ありていに言うと、結婚について考えることがほとんどなかった。
 というか、それほど頻繁に訪れるのだろうか。結婚を意識することが。
 ここで、私が、“引く手あまた”で“もてもて”で“異性に困ったことがない”ようならば、話は違ったのかもしれない。
 あいにくそんなことはなく、ずっとあの残滓を求め続けながら、私はここまで来た。

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 結婚式については、数年前に文章を書いた。従姉の結婚式の時の日記。
http://save-own-sentences.tumblr.com/post/12366260134/2010-03
http://save-own-sentences.tumblr.com/post/12454903644/2010-03
http://save-own-sentences.tumblr.com/post/12502610152/2010-03 
 あのイベントは今でもかなり記憶に残っている。
 しかしながら、それが自分にもきうるのかと思うと、まったくぴんと来ない。予定もないのだから、仕方がないのかもしれない。

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 個人的には店長さんのpostが頭に残っている。
http://twitter.com/_mk2/status/2022702845

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 相変わらず、自意識について書くのはいまだに苦手だ。
 ましてや「あれ」を「自意識」という単語に落とし込むのも。
 ここで、白状する。
 「相手は自分と結婚してくれないだろう」という思い。
 それが最大の足かせ。

 ここでの「相手」は、いるかいないかは関係ない。
 いようがいまいが、「いるとして、こんな自分となんて結婚してくれないだろう」なんて考えが頭をもたげるのである。
 こわいこわい。

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 あとは、結婚という制度の話もある。制度への意識。結婚に関する話の時にも、そういう制度上のメリットデメリットの話は出た。
 今まで意識していなかったそれを意識するとき、ようやく制度について調べ始めるのだろうし、いま考えたって仕方がないのだろうと思う。

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 結婚についての話が出た時は、「結婚したら遊べないじゃん」であるとか「できるならしたい」であるとか、さまざまな意見が飛び出しているわけで、その多様さは意外でもあり面白くもある。
 こういう時の模範解答が気になる。建前。結婚に対してどう言えば角が立たないか。なにせわからないので。

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 少なくとも、私に関しては。
 ずっと残っている気持ちの整理が終わらない限り、ずっと上記のようなことを断片的に考え続けるのだと思う。
 だからこそ、「その時になってみれば分かるよ」なんて言われたら、やっぱり少しばかり、おこってしまうかもしれない。

軌跡シリーズ - 戦闘システムの変遷は何を減らし何を増やしたか

 軌跡シリーズにおける戦闘システムの話。
 一応ここでは空の軌跡FC/SC/the3rd/零の軌跡/碧の軌跡の話をあげている。那由多は戦闘ジャンルが違うし、閃はこれからだし。
 これらのゲームの戦闘についていくつか書いているので、一つも情報を入れたくないという方は注意。特に碧の軌跡の二周目特典。ストーリーネタバレはなし。

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 軌跡シリーズの戦闘システムの改善には注目すべき点がいくつもある。
 空の軌跡FCでの骨組みだけでも十分ながら、そこからプレイヤーの要望に合わせ次々と変更が施された。その点をすべてあげるのは大変だ。
 また、SC/the3rdにおけるチェインクラフト、零/碧におけるコンビクラフト、そしてオーブメント・オーバルアーツの変更など、新要素も多く取り入れられている。
 まず、この変遷について軽く書く。

    ***

 ゲームシステムの変更、第一の理由は当然、利便性だ。
 戦闘をよりスムーズに、ストレスフルに。それが基本の理念。
 単純に、戦闘で煩雑な部分を取り除いた。
 例を挙げよう。
 アーツ(魔法)のエフェクトの長いものは、次作で短くなった(エアリアルなど)。
 前作でメンバーの装備をいちいち変えるのが面倒な状態だったから、次作では自動で外せるようにした。
 PC版では自動カーソル移動だったのが、零/碧ではPSPに合わせリング状メニューになった。
 零碧になり、アーツやクラフト(固有技・必殺技)の演出はSTARTボタンでカットできるようになった。レベル差がある場合、エンカウント前攻撃で倒せるようになった。

 ある意味、これらの変遷は、ボトルネックを取り除き続けた結果ともいえるだろう。
 戦闘においては、必ず律速がある。
 エンカウント。オープニング。カーソル合わせ。敵の選択。攻撃エフェクト。敵のムーブと攻撃。回復や移動。撃破。戦闘終了リザルト。これらのなかで最も時間のかかり、戦闘時間を決めている要素。それらを次々に変更していったのだ。

    ***

 戦闘システムの変更が必要だった、第二の理由。インフレ。
 多くのゲームでその要素はある。雑魚敵よりもボスは強くなければいけない。話が進むごとにボスもキャラクタも強くならなければいけない。
 どこかで、「レベルの存在によりプレイヤーが自分自身で難易度を操作できる」という文を読んだ記憶がある。レベルが設定されていることで、プレイヤーの操作スキルの差異をプレイヤー自身で調整してもらう。いくつかのゲームにおいて必要な部分といえる。ただそれにより、プレイヤーに調整してもらうために「敵の強さ設定の調整」は、ゲーム側が行うことになる。(注記:以降、「インフレ」という語句は「戦闘力の上昇」という意味で)

 空の軌跡FCの例。
 戦闘攻略法の一つに、状態異常がある。
 敵を状態異常にしておいて倒すことは常套手段だ。
 例えばアーツの一つ「カオスブランド」。敵一体を「混乱状態」にする。混乱状態になると同士討ちかふらふら移動以外の行動はとらなくなる。とりあえず敵にこれをかけておいて、あとはぼこぼこにする。
 たいていの敵にはこれが効いた。中終盤で出てくる攻撃力の高い敵にも、これをかけることで幾分戦闘が楽になった。攻撃力が高いのはインフレによるものだが、このアーツひとつでその攻撃力は敵から味方へと変わった。
「あ、この敵強い。じゃあまずカオスブランドかけて、そこから……」
 次作以降では、これに対し対策が取られた。
 「耐性」。
 状態異常無効を持つ敵が多くなったのである。たいていのボスには混乱耐性がついた。それだけではない。石化にも、一撃必殺にも、耐性がついた。当然の措置ともいえるし、それは情報取得のクオーツを装備しておくことでプレイヤー側も把握できた。

 さあ、続編であるSC/the3rdのボスに、カーソルを合わせてみよう。情報を見ることができる。
 敵が持つのは、耐性の山。
 あの状態異常にはならない、その状態異常にもならない。
 インフレの一つであることは当然として、これにより、プレイヤーの攻略方法も変わっていったのである。

 さあさあ、さらにその次の作品、零の軌跡/碧の軌跡をみてみよう。敵情報ではなくアーツ一覧である。カオスブランドの項目。
 『敵一体攻撃・確率10%で混乱する』
 ついにアーツの効果が変えられたのだ。
 補助魔法から攻撃魔法へと。
 また、中ボスくらいにカーソルを合わせてみる。状態異常無効マークが二十近く並んでいる。
 このため、プレイヤーは、状態異常中心の戦略をあきらめ、「状態異常になればラッキー、それよりも強さ」「属性弱点をさらに突く」「耐性を持っていないという弱点を狙う」などへと変化していったのである。

 このように、簡単すぎる選択肢の排除は、いくつもの理由により、戦闘システムが行う。それはインフレのためであり、安易さの除去であり、攻略に頭をひねってもらうための対策である。

    ***

 次の話に入ろう。
 このような、大きく二点に分けられる戦闘システムの変更により、何が起こったのか。
 ボトルネックを取り除きつつ、エンカウント量は変えず、ゲームのボリュームをアップし、安易な選択肢を減らした、その結果、どうなったのか。
 もうご理解いただいているかもしれない。
 「戦闘行為自体が、ゲームにおいて律速になった」のである。
 軌跡シリーズには、いくつものイベントがある。戦闘のみではない。メインクエスト、サブクエスト、街まわり、ダンジョン、謎解き、などなど。
 その中で、戦闘の時間消費が、どんどん増えていった。
 総プレイ時間における戦闘時間の割合。これが大きくなったのだ。

 一応注記しておくと、零/碧においては、エンカウントの変更で戦闘時間短縮の動きがあった。レベル差が大きい時はフィールド攻撃で倒せる。それ以外の雑魚敵も、フィールド攻撃を背中から撃つことで怯ませ、先制攻撃状態にできる。いずれも短縮に一役買っている。

 ただやはり、シリーズが進んでゲームのボリュームが増えた分、戦闘の煩雑さも増えたように思う。あの敵の多さ。ダンジョン攻略ですら、いくらか分かりやすい一本道が増えたのに、敵の量は依然として多く、エンカウント数0というわけにいかない。そしてレベル上げのためにも、戦闘が必要な割合、そして時間割合は大きくなった。

 ボス戦。HPが上がった。固くなった。ほとんどの状態異常が無効になった。
 戦闘インフレにおいては、「敵のHP上昇」も「防御力上昇」も同じ意味を持つ。
 そしてインフレを起こした強大な敵を倒すには、「レベルを上げる」か「時間をかけて倒す」か「弱点を突き続ける」かに大別されるようになる。
 前はここに状態異常云々もあったのだが、それは前述の通り、慎重に除去された。

 結果、戦闘への歯ごたえが増えた。いいことだ。
 事実、零/碧のプレイ中は、空の軌跡FCよりも緊張感がある。エンカウント方式の変更のためだ。
 ただ、雑魚敵も「面倒な敵」へと変わったことで、いつまでも緊張感が残り続けるという道中になったのだった。

    ***

 いつまでも続く戦闘。ちょっとばかり、辛くなる時もある。
 ボスにたどり着く前のダンジョン。これは、レベルを適正にあげてもらうための場所という一面を持つ。
 ボスが固くなり、レベル上げが重要になった以上、このダンジョンも例外なく長くなった。
 最たる例は、the3rd終盤における某ステージである。
 非常階段のようにいつまでも降りていく一本道ダンジョン。四つの角に配置される敵。いつまでも終わらない。そして最下部での特殊な小ボス。経験値はどっさり入るが攻略が難しい。
 なにせキャラクタ自身が「腕試しの場所だから、必須ではないが行ってみるのもいいのかもしれない」などと喋るようなステージである。
 あの場所の攻略を繰り返せば、レベルは上がる。ボス戦は楽になる。ただ、「時間」以上に「ストレス」の方が増えるというのもまたありがちである。


    ***

 さて。この戦闘システム変遷の結末について書こう。
 「戦闘」というものに対し、最終的にどのような解決が与えられたのか。
 軌跡シリーズにおいてそれは、「葉隠」のクオーツ、そして「AUTO戦闘」である。
 まず「葉隠」のクオーツ。
 このアイテムは、空の軌跡の終盤や隠しで出てくる。これを装備すると、敵に接触しても戦闘にならない。これにより、「雑魚敵と戦ってレベルを上げるか」「進めるために敵を避けるか」を選択できるようにしたのである。
 「AUTO戦闘」は、碧の軌跡二周目以降の実績ポイント解放機能。
 これが出てきた時は、私自身さすがに吃驚した。ある種存在してはいけない機能であり、「あって欲しかった」ものであったからだ。
 ゲーム終盤、雑魚敵を倒す楽な方法は、「攻撃」の連打である。敵のダメージは気にせず、ひたすら味方キャラクタに「攻撃」の指示を出す。これが簡易で、経験値もセピスも少し入る。ポケモンでもドラクエでも、こういった状況になる時がある。
 何十回もこの攻撃連打をして、私は思ったのだ。半オートな戦闘機能があれば楽なのに、と。まさにそれの具現化である。危なくなったらSELECTで解除もできる。ボス戦では自分でキャラクタを操作すればよい。
 ゲーム二周目以降も、この戦闘量ではさすがに飽きがくる。ただでさえこのシリーズは、ゲームが進むほど二周目以降の得点が増え続けてきた。
 ボス戦はともかく雑魚戦は、この機能が非常に役に立つ。

 ついに、戦闘システムは、戦闘という最後に残ったネックも、回避する術を用意したのだった。

    ***

 戦闘は華だ。そしてその華を維持するために、戦闘要素を持つゲームはどれもシステムを洗練させてきた。
 そして短所を取り除くのは改善の基本。特に軌跡シリーズでは、その変化が分かりやすい。
 そして少し思う。
 戦闘は華。だけれど、これらの変化で、どう戦闘を楽しむのかというのも、変わりうる。
 つまり、戦闘システムの変化は、楽しみの変化とも連携している気がする。

    ***

 ※その他
 この話に関連して、零/碧において街歩きの時間が非常に長くなる現象、通称「クロスベルマラソン」についても書こうと思ったけれど、焼き直しになるのでやめておく。
 街が便利になり、装備等のシステムが改善され、徒歩以外の移動手段も準備。そうなると、「ころころ変わる街の人との会話」の時間割合が増えるのは当たり前のことなのだろう。その他の理由もあるけれど。

失敗しうることは失敗するだろうから

 マーフィーの法則が大好きである。

 最初に出会ったのはなんだっただろうか。確かマーフィーの法則に似たもので、「機械が壊れたことを誰かに証明しようとすると動き始める」。あれほど腑に落ちた時もなかなかない。
 失敗しうることはいつか失敗する。なんとなく、この法則を意識しているだけで危機管理へ対応している気分になる。

 いつだったかこの法則に関して考えたこと。
 例えば、機械にA,B,Cのボタンがある。AとBは機械の操作に必須。ただCは絶対に押してはならない。Cを押すと爆発する。
 こういった状態に置いていると、駄目だと分かっているのにミスや何らかの要因でいつかCを押してしまう。ボタンとして同列に並べてしまう以上、仕方のないこと。Cを押して欲しくないのならボタンのままにしておいてはならない。Cがどうしても保安上必要な場合はA,Bと並べておいてはならない。
 このあたりの考えはフェイルセーフの思想と一致する。

 これを頭に入れておくと、日常生活でも、「失敗することを防ぐ」よりも「失敗しうることを防ぐ」ことに意識が行く。
 ここに刃物を置いておくとぶつかったり落としたりして大変なことになるから仕舞っておこう。
 ここで作業するとこういうことになるから移動しておこう。
 こんな具合。 
 ただし、やりすぎると「傷付きうるから傷付きうるような行動をやめよう」になるわけだけれど。


 マーフィーの法則というのは意外と適用が広い。
 先に示したフェイルセーフ・ポカヨケの考えの他、「失敗した例外状態ほどよく覚えている」という記憶状態に関する内容もある。「機械が壊れたことを誰かに証明しようとすると動き始める」も後者。
 珍しい成功も珍しい失敗も、人の記憶に残りやすい。クイタンであがった時よりも役満をあがった時の方が記憶は鮮明。
 失敗する時に限ってこうだ、という考えは、「勝手な法則づけ」にもつながってしまう。

 マーフィーの法則が好きな理由。
 それは動物っぽさが出ているからなのかもしれない。
 やってはいけないことをやってしまう。やってはいけなかったことばかり覚えている。
 「傷付きうるから傷付きうるような行動をやめよう」というのも、ある意味では、過去から学んだことによる勝手な法則付けなのだろう。

理不尽な要求

 理不尽な要求というのは時に人を困らせる。
 ……みたいな固いスタートからいろいろ書こうと思ったものの特にオチも浮かんでいないし適当に。


 キャラクタが作中でなんらかの要求してきたとする。
 要求と一口に言ってもいろいろあるだろう。たわいない甘え、無邪気な我儘、冗談交じりの振り。
 その中でも理不尽な要求、叶えられないようなものを突然突きつけられたら。


 ヤンデレ。あいまいなくくりよくないとは分かっているので便宜的な例えとしか用いないことにする。
 そう呼ばれている割合が多いキャラクタ自体にはそれほど嫌悪はない。けっこう読むし。
 ならどうしてそこに怖さが出てくるのか。
 恐怖の元は理不尽な要求なのかな、と。
 叶えようがないものを求められる。できるのが当然のように。
 そしてまあ、パターンによっては、叶えられない時のペナルティというのも大きく配置される。


 誰であろうと理不尽な要求というのはかなりの力を持つものだと思う。
 あるいは力の差異によりその理不尽な要求をすることができる。

「碧の軌跡」クロスベル自治州の政治的背景の確認まとめ

 ずうっと前にgoogle documentに置いていたテキスト。改めてこっちに貼っておく。たしかネタバレ対策で書いたんだったかな。ちょっと書き直し。元のファイルは消す予定。

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碧の軌跡」クロスベル自治州の政治的背景の確認まとめ  更新2011/10/14

 タイトルの通りです。作中政治的内容の解説・分析。ネタバレ満載。プレイ終了後に確認のため読むことをお勧めします。一応各章の話題で分けておきます。

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二章終了後

■内容の整理
 二章メインイベントにより、クロスベルおよび諸国の思惑がはっきりと描写されるようになりました。本稿ではそれについて整理します。

 クロスベルの不安定さについては零の軌跡(以下零)でも語られているところですが、二章においてはそれが各国の立場から描写されました。
 独立していないクロスベル自治州がカバーできない点は主に二つ、「防衛力の不足」と「主権の不定」だと思われます。
 現実世界における「国の独立に必要な点」は有名ですが、あれは国際法からの要請のみならず実際の面でも重要です。「国民」、「領地」、「主権」ですね。そのうち前の二つはクロスベルでも当然持っていますし、作中で言及される他従属国も持っていることでしょう。というわけでクロスベルが安定するには独立として必要な「主権の完全確保」およびそれらを守る「防衛力」になるわけです。要出典。
 難しい理由は作中で重要なワードが示されました。「宗主国」。他従属国は宗主国を持っているために「主権の確保」や「独立の承認」が可能であったのですが、クロスベルはその特殊な性質上、独立が可能ではありません。帝国も共和国もただ承認することはほぼないからです。また、「法による独立宣言」も難しいのは会議中に語られました。国でない以上、法の持つ拘束力が弱いからです。
 そのため、重要なのは、他国に依存しない防衛力を確保すること、独立を宣言できる何らかの安定した場所を確保することになるわけですね。
 防衛力の不安に関しては作中で語られています。「教団事件」によるものですね。軍備が制限されている以上しょうがないのですが、拡張するには現状で帝国および共和国の承認が必要であり、二章時点で承認されることはほぼありません。
 主権の不安に関しては、どうなんでしょう? 議会制であることは示されていますが、自治州法は作中解説の通り貧弱で、投票制や主権者も明示されていません。議会でただ独立宣言しても帝国共和国承認が必要となる以上どうにもなりません。
 これらを前提において、会議後半において各国が提示した提案を見てみましょう。

■各国提案の整理
1.帝国の提案 
 警備隊の撤退、他国軍備・それも帝国軍のクロスベル配備。
 いかにもトンデモではありますが、実はある程度理にかなっているんですね。作中でも語られている通り、警備隊ではクロスベルを守りきれない可能性があります。その根拠はご存じ「教団事件」および「二章の某イベント」。よって、制限された警備隊装備よりも他国の軍備を入れろ、そうすれば軍事的に安定するから、なんて提案なわけです。
 しかしながら他国はこれを受け入れるわけにはいきません。軍事力を抑えられるとクロスベルは政治も難しくなり、それこそ帝国に首根っこを持たれるどころか帝国領土の拡張そのものになりかねません。クロスベル当国どころか共和国その他も拒否するのは当然のことでしょう。議長さんが興奮して立ち上がったのもうなずけます。

2.共和国の提案
 警備隊の軍縮、東門に共和国の、西門に帝国の軍備をそれぞれ。
 ひねり手ともいうべき提案。共和国側がなぜこれを言い出したかというと、1.の帝国案を受け入れるわけにはいかないことと、安穏ながらも両国が牽制としてクロスベルを使いやすくすること、なんてことがあげられます。提案の根拠は1.と同様。
 帝国としては面白い提案でしょう。なにせ帝国としても本気で1.の提案が通るとは思っていません。しかし西側に配備することは可能なわけで、それこそ描写されている列車砲でも置けば共和国へのけん制となります。クロスベルへの干渉もより楽になるわけで、利点は多いです。
 しかしクロスベルとしては受け入れるわけにはいきません。警備隊縮小どころか両門へ別国が配備されると戦時ではいいようにされかねず、しかも先述した「領土」領域の明確な定義も難しくなり、クロスベルがどんな土地になるのか定義することもできなくなります。
 さすが狸と称される彼の提案。特務支援課が「ひどい……」とか言い出すわけです。

3.市長の提案
 イベント後、二章を締めるディーターさんの提案。
 ディーターさん的には一番いいのでしょうが、二章時点ではかなり難しいと言わざるを得ません。ここで前文の二つ、「防衛力の不足」「主権の不定」が関わってくるわけです。
 防衛力の不足。これは作中で語られました。クロスベルは警察・警備隊の維持だけで守りきることが難しいという状況です。これでは国家の三要素を維持できなくなる可能性があります。ちなみに「クロスベルの宗主国がころころと変わっている」という台詞により背景が説明されています。クロスベルは歴史的に独自防衛力を持つような状況に置かれていないわけですね。現在の帝国共和国連携もそういう事情によるものが大きいのでしょう。
 主権の不定。これはちょっと憶測入るかもしれません。一応議会制であることは描写されているものの、クロスベルの主権がどういう状況にあるのか、自治州法の描写が不定でよくわかりません。完全に州民が主権を持っている場合それこそ独立はそこを足掛かりにすべきなのでしょうが、そうもいかないようです。議会決定で独立宣言してもどうしようもないのではないか、なんて思います。だいいち選挙制なんでしょうか。それどころか共和制なのでしょうか。自治州法が独立でないのに共和制て。
 そしてこの主権の不定により、独立宣言を周辺国が認めるか否かという問題にもつながっています。それこそほかの従属国のように法国が認めて、という流れになれば大陸的にも認定につながるのでしょうが、認定をどう得るのか難しいところです。
 というわけで各国の反応予想。帝国共和国はこれらを良しとしないでしょう。まず一つは税収10%問題。独立した場合これがなくなることから、彼らはクロスベルというお小遣い稼ぎボックスを手放すことはないでしょう。次に、クロスベルが商業的重要都市であるため、独立した場合取引等のルールが変更になります。関税などがそうですね。さらに軍事的問題とすれば単純に他国干渉がより複雑になることでしょう。リベールはかなり好意的だと思います。それは不戦条約。「国」であることで結ぶことのできる条約を、クロスベル独立後に再び結び直せば周辺の安定につながるからです。
 最後にもう一点。独立はクロスベル自体にとっていいものになるのでしょうか。

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インターミッション終了後
 独立のためのディータなんとかさんの布石が示されました。自治州法準拠ですし国際法拘束力もないので、それこそ本当に意思表示というか周辺国へのポージングといったところでしょう。議論活性化は重要なところではあります。しかしながらこんなイベントを行おうとすると、賛成していない組織はどう思うのか。その辺り気にしつつ三章とかみていこうかと思います。

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三章終了後

 政治面から見れば、たぶん布石回、なんでしょう。政治的内容についてはいくつか。
 独立に向けて動き出そうとするクロスベルとそれを阻止したい帝国共和国が揺らがせようとする展開。
 経済的動脈である鉄道に関する問題。もっともこれはそこまで政治的にかかわってくることではないのでしょうが。
 猟兵団の動き。これもまたストーリーとしては政治面と別方向。第一、帝国はこれだけの猟兵団を動かせるならクロスベルを揺るがすのも簡単な気がしないでもありません。

 三章についてはストーリー展開について色々感想を書いていますが、それはまた別の場所で。

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 とりあえずここまで。4章以降は政治的内容についてがっつりかかれているので、ここで補足するようなことはあまりないような気がします。以後はゲームにて。

ボードゲーム日記:改めて囲碁を覚えようかと

 将棋や麻雀は、それこそ幼稚園くらいの頃から父に教わり始めた。
 将棋に関しては、幼稚園時代のアルバムの一言コメントにその証拠が残っている。他の子は「アイスクリームやさんになりたい」とか書いているところ、私の所には「しょうぎたのしい」などとあった。どうかと思うけれどネタにはなる。
 もう少し大きくなるとできるゲームも多くなった。オセロからチェスからバックギャモンから、チェッカーやポーカーまで。
 やはりそこでも父の影響は大きい。チンチロやトランプのおいちょかぶ。こうしてみると父はギャンブルが好きすぎる。まあ、「ほどほどに」ギャンブル好きという性格は受け継いでいると自負している。深追いはしない。


 それでも、できないゲームはあった。
 そのひとつが囲碁だ。
 父ができなかったために教わることがなかった、という要因は当然ある。家に道具もなく、あまり触れる機会もなかった。一時期の囲碁ブーム再燃の際にもちょっと覚えようとは思ったけれど途中で断念。
 そんな感じで、私の中での囲碁は、「だいたいのルールは知っているがプレイできない」という珍しい状態になった。


 囲って石取りゲームくらいならできた。オセロ版で友達と。ただルールを決めていなかったのでコウなどは無視。そういうのでは当然おままごとみたいになるわけで、囲碁の感覚をつかめたとは言い難い。
 分からない点については整理していた。勝利条件、地というのは一体なにでそれは言葉で定義されているのか、序盤なぜそういう場所に打つのか。
 しかしこの疑問は長く解決されなかった。


 そして、最近。
 出先でボードゲームの会話になりいろいろ持ってきたりして、ある程度流行らせることに成功した。また、出先にもともとおいてあるものもあった。将棋、麻雀。
 そんなレパートリーに、囲碁というものは突然現れた。
 この間日記でも書いた、数週間の引っ越し。移転作業。その時の廃棄場所に十九路盤セットがあって、それを同輩が拾ってきたのだった。
 そんなわけで、囲碁に再び触れる機会ができた。

                  • -


 囲碁を知っている先輩による講座。そこから始まった。
 十九路盤から始めるわけにはいかない。当然だ。九路盤から。
 ルールはある程度抑えていたので、せっかくだし、初心者らしい疑問をぶつけて、先輩に答えてもらうという流れにした。
 一つ目。
 私は適当に盤を指さす。
「どうしてこの辺から打つんですか?」
 序盤の動きについて。
 囲碁をみているとだいたい三々(端から3,3のところ。以後便宜上座標で)の場所とか星(4,4)とかに打っているような印象がある。ぼんやりながら。ちなみにこういう「印象」というのは麻雀やっていない人が麻雀を見て「十数枚の牌を引いて捨ててたまに全部表にする」というような印象と変わらない。大まかなくくり。
 ただやはり、序盤というのは重要だと思う。麻雀で初手にその牌を切るのは、その牌を持っているとアガリまでの手数が遠くなるためだ。チェスで初手白e4なのは、オープニングで中央へ進ませつつ他のコマの動かせる場所を増やすためだ。オセロで序盤取りすぎないようにするのは、中盤以降の取れる場所を生かすためと、相手に囲ってもらうためだ。7ならべでAやKを置くための布石行動をとるのは、それらのカードが置きにくいからだ。
 そういった定石を知ることで、初めて破戒が生まれる。その他の手を考えることができるようになる。なぜその手が良手/悪手なのかわかるようになる。
 先輩は教えてくれた。
 端と中央、何が違うか? それは、囲われやすさ。例えば角(1,1)に黒を置いたら、白を二か所(1,2)と(2,1)に置くだけでとられてしまう。しかもそれを防ぐよう、黒(1,1)、白(1,2)、黒(2,1)、白(2,2)と縦に伸ばしていくと、いつかはやられる。
 辺の石を囲うには三か所。中央は四か所。
 石を取られるとその分はハマと呼ばれ終局後地の埋めに使われる。簡単に言うとマイナスポイント。
 なるほど。
「なら、囲われにくい中央から押さえていくべきでは?」
 ……中央は、囲われにくいが囲いにくい。三々に打つと、相手がそれよりも内側に打ったところで囲って取りやすくなる。つまり角を自分の陣地っぽく牽制する手ということ。
 そして三々とかそういったのの外側の手として、星やら小目やらがある、と。……
 こんな感じの説明だった。模擬戦をやってみると納得できる。取られるか、取るかという位置取りのようなもの。
 ちなみに、教わるうち、この「牽制」こそがどうやらカギになるらしい、と私は思った。牽制合戦。


 二つ目。
「『地』って何ですか?」
 雰囲気的に言われても、さっぱりわからない。最終的にはその数が勝利ポイントになるはずなのだけれど、ルールを知らない人にとってはそれが見えないのだ。
 先輩は適当に石を置く。
 ……ここに置くと、だいたいこの辺が地。ここにも置くとこの辺全部。まあここだと相手が入り込んできて地が確定するわけじゃないかな……。
 すごく分からない。

囲碁において地(じ)とは、白黒双方の対局者が自分の生きた石だけで囲い込んだ空間のことを指す。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%B0_(%E5%9B%B2%E7%A2%81)

 これについては、模擬戦をやるうちに分かってきた。
 基本的に、先に一つでも石が置いてあると、囲い合いになった時有利なのである。相手が囲おうとしてきたら、すでにある石と打つ石を縦横で繋げておけば、囲い終わるまでに多くの石を費やす必要があったり、囲いきれなくなったりする。逆に、すでにある自分の石の横に相手が置いてきたら、自分の石を利用して囲いに行ける。
 これらを考えると、すでに自分の石で「囲いのようなもの」ができていれば、そこに相手は置きに行けない。すぐ石が取られる。
 そうするとどんどん、牽制合戦になる。
 自分の石を囲われにくくなるよう繋げ、相手の石を囲いやすくするよう分断する。そうすると囲碁でよく見る終盤のようなきっちり囲いのできた状態になる。
 で、得られた領地が、地と。


 模擬戦をやると、中盤の悪手は徐々に理解できるようになる。ここに置くと取られる。この感覚は将棋の駒の効きに近いのかもしれない。逆に言うと、「ここに置くと取られる、じゃあここに置こう」「ここの石が囲われそうになっているからここに置いて助けよう」といった考えが簡単な「読み」になる。
 それさえ繰り返していけば、なんとなくそれぞれの領地というのが盤となって表れてくるようになるのだ。
 ちょっと楽しくなってきた。


 三つ目。今のに関連しつつも、話が戻ってしまう。
「じゃあ中央からとっていけばいいのでは?」
 わざとこんな質問をした。理由がある。
「たとえば九路盤だと、置ける場所は八十一カ所。一手ずつ置いていくわけですから、自分と相手で半々くらいになります。端から詰めていくとすると、勝負が決まるのは中央をとったかどうかになるのではないですか?」
 当然、石を取ったり取られたりはある。しかし、牽制合戦である以上、お互いに領地を取り合ったら、最後の一目がカギになるのではないだろうか、という自分の考え。一応頭の中にあるのは41目対40目みたいな図である。囲いの手数はパスがない以上ほとんど同じだから計算に入れなくてもよい。
 ところがやはり、そうはいかない。先輩は首を振る。
 先述の通り、中央はすぐに制圧するのが難しい。かといって中央を囲うようにすると、相手に周囲の地を確保される。
 先輩が見せてくれたのは額縁のような図だ。外が白で、中が黒。中地と呼ばれるもの。内側だけをとっても、意外と地の数は大きくならない。
 なるほどなあ。端や辺を確保しつつ中央の牽制合戦に勝てば勝利へ近づく、と。
 ただやはり、九路盤くらいでは中央も十分有効らしい。大きい盤だと違うのだろう。それこそどうぶつしょうぎと将棋の駒の効き具合の差のように。


 あとはレクチャーされつつ模擬戦。
 ハンデとして置き石置き石が星に置かれる理由もここまでくると分かってきた。
 上級者と打って、悪手が「プレイによって」咎められることは理解につながる。子供の頃、将棋で父に嫌というほど飛車を取られた。対戦テレビゲームでも、安易な攻撃は反撃を食らう。
 やっと、置いてはダメというのが分かってきた。


 石を生かすことについても教わった。
 ルール関連は読んでいたので「二眼」については知ってはいたものの、よく分からなかった。
 「自殺手は打ってはならない」「その一手で石を取れる時のみ着手禁止点に打ってもよい」の二つのルールによって成り立っている、と分かった時、これを理解した。生かすためにはルールを利用して自殺手になる場所を二カ所以上作ればいい、というわけだ。ただすごく難しい。セキとかナカデとかも意識できていないし。


 ここまでやると、ダメ埋めに関しても簡単に理解できる。
 例え終盤でも、取られうるところをしっかりしておかないと、咎められる。まるで停戦協定のような終盤処理。


 最後の質問。
「先手ってそんなに有利なんですか?」
 コミについてだ。先手有利による6目半(十九路盤)のハンディキャップ。
 今までの話と模擬戦で、先に石を置くことの有利については分かった。ただそれが6.5ポイントの差になるとは思えなかったのだ。
 まあ、こればかりは、やっているうちに分かるのだろう。
 「有利だよー」と先輩に見せてもらった序盤順から見ても、なんとなくしか分からなかった。なにかもっとイメージしやすい場面があるといいのだけれど。

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 こんな感じの講座だった。
 今もハンデをもらいつつ何回か対戦中。何十もの石が死んだときのショックと知識不足痛感っぷりがどうにもならない。
 ただ、講座では疑問の解決に徹したことにより、把握が早かったように思う。ルール記憶からだとまた違ったのだろう。
 せっかくだしこのまま初級者レベルくらいまでは覚えていきたいなあ。